データベースの基礎

データベースは、データの集まりです。
私たちの身の回りには、顧客情報、商品の在庫、ウェブサイトの閲覧履歴、SNSの投稿などのたくさんのデータがあります。これらのデータをただバラバラに管理していると、必要なものを探すのが大変になってしまいます。
データベースでは、特定のルールに従ってデータを整理し、コンピューター(記憶装置)の中に保存します。これにより、データベースでは次のような操作が行えるようになります。

データベースの操作

  • データの追加(Create):新商品や新しい顧客の情報などを記録します。
  • データの検索・取得(Read):特定の商品情報や顧客の連絡先などを探し出します。
  • データの変更(Update):商品の価格が変わったり、顧客の住所が変更されたりした場合に内容を更新します。
  • データの削除(Delete):必要なくなった情報を削除します。

データベースの操作の頭文字をとったものをCRUDといい、データベースでは大量のデータがあっても、簡単かつ安全にデータの操作が行えます。

データベースの構造にはいくつかのモデル(階層型、ネットワーク型など)がありますが、現在最も広く利用されているのが「リレーショナルモデル」です。当サイトでは、このリレーショナルデータベースを中心に解説を進めます。

内容は、IPA(情報処理推進機構)の「データベーススペシャリスト試験」のシラバスや、LPI-Japanが提供する「OSS-DB技術者認定試験」の学習にも役立つことを目指しています。
データベース管理システムでは、オープンソースで高機能な`PostgreSQL`を使用して解説します。

データベース管理システム (DBMS)

データベース管理システム(DataBase Management System, DBMS)は、データベースを効率的かつ安全に管理するためのソフトウェアです。
リレーショナルデータベースを管理するものではRDBMSと呼ばれたりしますが、本サイトではDBMSで統一いたします。

データベースのデータもコンピュータ上のデータとして最終的にファイルとして保存されますが、大量のファイル内のデータを管理するのは非常に困難です。
DBMSは、それらの大量なファイル内にあるデータの管理を簡単にして安全に管理が行えるようにしてくれます。

DBMSが提供する主な利点

  • データのインデグリティ: 制約やルールを使って、正確で一貫性のあるデータだけが保存されるよう管理します。
  • 高速なデータ検索: インデックスなどの最適化技術により、大量のデータから必要な情報を素早く取得できます。
  • アクセス制御とセキュリティ: ユーザーごとに操作権限を設定し、不正アクセスやデータの改ざんを防ぎます。
  • 同時利用時の整合性確保: 複数ユーザーが同時に操作しても、処理の衝突やデータ不整合が起きないよう制御します。
  • 障害時のデータ復旧: トランザクションログなどの仕組みにより、障害発生前の状態へデータを復元可能です。
  • 信頼性の高いトランザクション処理: 一連の処理がすべて成功するか、全て無効になることで、処理全体の整合性と信頼性を保ちます。

メタデータとシステムカタログ

DBMSには、データそのものの管理だけでなくデータを管理するデータであるメタデータがあります。
メタデータには、次の情報があります。

  • テーブル定義
  • インデックス情報
  • ビュー定義
  • リレーションシップ情報
  • アクセス権限情報
  • トリガーやストアドプロシージャの定義

このメタデータを一元的に格納・管理しているのがシステムカタログ(またはデータディクショナリ) です。
DBMSは常にこのシステムカタログを参照することで、データベースの構造を正確に把握し、整合性のある データ操作を実現しています。

SQL

DBMSで、データベースを操作するためにSQL(Structured Query Language)という言語があります。
SQLを使用することで、DBMSのデータベースからデータの検索、追加、更新、削除といったあらゆる操作を指示することができます。
詳細は後述の「SQL」の章で詳しく解説します。

データベースに関わる役割分担

データベースに関する作業は多岐にわたり、特に大規模な開発では役割が分担されるのが一般的です。
代表的な役割として、DA(Data Administrator:データ管理者) と DBA(Database Administrator:データベース管理者) があります。

DA (Data Administrator) - データ管理者

主に企画や設計といった上流工程を担当します。「どのようなデータを、どういう構造で管理するか」を、ビジネス要件に基づいて決定する役割です。

  • ビジネス要件の分析とデータ要件定義
  • データベースの概念設計・論理設計
  • データ標準化や品質管理ポリシーの策定
DBA (Database Administrator) - データベース管理者

主に構築や運用といった下流工程を担当します。DAが設計したものを、具体的なDBMS上で「どうやって実現し、安定稼働させるか」を担う技術的な役割です。

  • データベースの物理設計と構築
  • パフォーマンスの監視とチューニング
  • バックアップ・リカバリ計画の策定と実施
  • セキュリティ設定とユーザー権限管理
  • 日々の運用・保守、障害対応

補足: 近年では、これらの役割に加え、データ分析基盤の構築を専門とする「データエンジニア」や、より広範なデータ戦略を描く「データアーキテクト」といった役割の重要性も高まっています。